年1回の治療による骨粗鬆症性骨折の予防
椎間板へルニアによる坐骨神経痛治療の研究でこれまでで最も信頼性が高いと考えられるものにおいて、手術を行った患者と保存療法を行った患者の長期アウトカムが実質的に等しいことを、オランダの研究者らが見出した。
症状を我慢できる患者は、症状がいずれ回復するという確信がもてれば、手術を先に延ばすことも可能であることが無作為比較研究(RCT)で明らかとなった。「長期保存療法を選択した手術適応患者の60%が、結局、手術を受けなかった。こうした患者の1年後のアウトカムは早期手術を選択した患者と同様であった」と、筆頭著者である神経外科医のWilcoPeul博士は述べている。 「坐骨神経痛の自然経過は我々がこれまで考えていたよりも良好である」(Peulel al., 2007を参照)。
しかしこの研究では、手術に重要な役割があることも明らかになった。poul博士らによると、"下肢痛に対処できない患者、回復の速度が許容できないほど遅いと感じる患者、できるだけ早く疼痛から解放されたいと考えている患者"には、早期手術は賢明な選択であると思われる。
多様な症状経過による不安定さに耐えられない患者にとっても、賢明な選択であると考えられる。「幼い子供を3人抱えている母親や自営業者には適切な選択かもしれない。これらの人々がこうした不安定な状況に直面したくないと考えるのであれば、早期手術を選択することも可能である」と、Poul博士は述べている。
全般的にみると、もっと多くの患者に症状が落ち着くまで待つよう働きかけることによって、本研究はオランダ� �椎間板手術率を引き下げる可能性力'高いと思われる。
自身を「手術には積極的だがエビデンスに基づく治療を行う:'管椎外科医である」と評するPouf博士は、オランダの現行ガイドラインで目安とされている6~8週間よりも後まで手術を遅らせることを検討するよう自分の患者には助言するつもりだと述べている。
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「私は患者に、もう少し長く待って、下肢痛の発現から3~6カ月後まで手術を受ける決断を遅らせるよう勧めたい。この期間の自然経過は、通常、良好である」と博士は最近コメントしている。
「ただし、坐骨神経痛のために働けない場合や、身の回りのことや家族の世話ができない場合には、やはり早期手術が一番の選択肢である」と博士は付け加えている。
Pouf博士は香港で開催された国際腰椎研究学会(IssLs)の年次総会で新規研究を発表し、 その論文が最近New England Journal of Medicineに掲載された(Peulet al.,2007を参照)。
手術時期に関する研究
1990年代半ばに、推間板へルニアの手術に積極的すぎるとして、オランダの脊椎外科医らが非難された。1994年に発表された研究によると、オランダにおける椎間板手術の実施率は米国に次いで2位であり、他の多くの欧州諸国よりも有意に高かった(Cherkin et al.,1994を参照)。これを知ったある参加者は、「オランダの外科医は手術をしていない患者に手術を勧める世界で2番目の悪者である」と不遜にも皮肉を言った。
「これには非常に気分を害した。しかし、確かにオランダでは大勢の人々が坐骨神経痛の手術を受けている。例えばオランダの手術実施率は英国の数倍である」と、peul博士は最近述べている。
オランダのガイドラインでは、6週間経っても症状が改善しなければ患者に手術を勧めていた。「これは諸外国よりも相対的に早い。英国では通常、椎間板手術は6~8週間後ではなく、5~6カ月後に実施する」と、Peul博士は述べている。
不安障害とDSM-IV
確間板手術の実施時期に関する
最初のRCT
そこで、オランダの研究者らは椎間板手術 に最も適した時期を明らかにしようと、特別にデザインされたRCTを行うことにした。重症の坐骨神経痛が6一、-l2週間持続しており、オランダでは通常すぐに椎間板切除術の適応になると考えられる患者283例を研究対象とした。
患者を(1)早期手術(研究への登録から2 週間以内)か、(2)長期保存療法(6ヵ月経っても症状が改善しなかった場合は手術を検討)の2種類の治療法のうちのlつに無作為に割り付けた。
参加基準を満たした被験者の年齢範囲は18 、,65歳であった(平均年齢は40歳代前半)。 いずれの被験者も活動障害性の坐骨神経痛と診断されており、画像所見に合致する症状が認められた。馬尾症候群、筋麻痺、または極度の脱力力;みられる患者は除外した。同じく、骨性狭窄または脊椎すべり症のある患者、過去l2カ月以内に同様の坐骨神経痛力'発現した患者、以前に脊椎手術を受けたことのある患者も除外した。
主要アウトカム評価尺度は機能的活動障書度(Roland活動障害度問診票で評価)、下月支痛の強度(ビジユアルアナログスケールで評価)、および全般的な自覚的改善度(Likert 自己評価スケールで評価)であった。
期開視ト一推間板切除術と、
医師の指導に基づく保存機法の比校
治療方法はわかりやすいものであった。椎間被手術に割り付けられた患者は標準的な顕微鏡視下椎間板切除術を受けた。保存療法は一般開業医が管理した。保存療法のプロトコールには、患者への説明を行うこと、患者を安心させること、疼痛をコントロールすること、および通常の活動を再開するよう促すことが含まれた。体を動かすことを怖がる患者には理学療法を紹介した。両群ともアドバイスと励ましに関して、看護師(research nurse)の協力を仰いだ。
llり明手術itf・の89%が「-術を受けた
早期手術群に割り付けられたl41例のうち、89%が無作為割付から平均2.
DVTと発熱2週間後に顕微鏡視下椎間板切除術を受け、16例(11%)は手術が実施可能になる前に回復した。
保存療法排の39%が最終的に手術を
選択した
長期保存療法に割り付けられた142例のうち39%は、重症の活動障害性の症状が数ヵ月間続いた後、最終的に顕徴鏡視下椎間板切除術を選択した。この研究ではintention-to- treat解析を用いたため、これらの患者のアウトカムは元の治療割付に従って解析した。
l年後の経過観察時の結果は同等
1年後の経通観察時の両群の結果は、?痛、活動障害、および全般的な自覚的改善度において同等であった二「l年後には両群の95%が完全に回復した.下肢痛とロ常機能に関するl年後の画詳のスコアはほぼ同じであった」とPeul博士は述べている。
この研究はl年後のアウトカムを調査するだけでなく、回復過程を記録することも目的としてデザインされており、回復過程は両群間で有意に異差がみられた。
研究開始後最初の4週間の活動障害度については、保存療法群のほうが優れていた。これはおそらく手術の即時的影響によるものと思われる。
しかし、その後数ヵ月間の活動障害度は手術群のほうが有意に� ��れていた。peul博士らによると、「下肢痛と併存する腰痛が手術後に急速に軽減したのに対して、長期保存療法群の疼痛はゆっくりと直線的に改善した」。
手術群の利点が最大となったのは、無作為割付の8一一I2週間後であった。しかし2つの治療群の間の平均差は、活動障害または疼痛のいずれの点でも特に大きいものではなかった。
Roland活動障害度問診票のスコアにおける平均差が、4ポイント("臨床的に重要な最小限の差"であると一般的にみなされる)に達したことは一度もなかった。また、下肢痛
の有意な軽減が得られたのは早期手術群のほ
うが早かったものの、疼痛スコアにおける優
位性の平均が100ポイントスケール(100は
最大疼痛を表す)で20ポイントを超えること
は決してなかった。もちろん平均スコア では、
重症の疼痛と活動障害を有する患者の状1態が
隠されてしまう傾向はある。
手術適応期間は長い
米国の最近のSpine Patient Outcomes
Research Trial(SPORT)研究と同様、
Pouf博士らによるRCTは椎間板手術の適応
期間が長いことを示唆している。Richard A.
Deyo博士力可i随論説で言及しているように
「研究への登録から数ヵ月後に手術を受けた
患者の結果が、2週間以内に手術を受けた患
者の結果と同様に良好であったことから、治
療の適応期間がすぐに終わるようには思われ
... 、 ない」(Welnstem et al.[a],2006;Worn-
stein et al.[b],2006;Deyo,2007を参照)。
オランダと米国における両研究の結果は、
(少なくともこれらの研究の参加基準を満た
す患者の場合には)椎間板手術を遅らせるこ
とによって神経根に取り返しのつかない損傷
が生じたり長期アウトカムが悪化したりする
のではないかという、多くの医師と患者がも
つ恐怖心を取り除くのに役立つはずである。
手術の実施を判断するのはf修_か?
手術を行った患者と保存療法を行った患者
の長期アウトカムが同様であるため、医療制
度側としては、本研究や他の最近の研究の知
見に基づいて椎間板手術を長期間待機するよ 一、 う命じる気にさせられるかもしれない。
しかしPeu1博士は、患者が主治医と相談し
た上で自ら判断すべきだと考えている。さら
に博士は、より良い情報に基づいて判断でき
るよう、簡単なアウトカム評価尺度を用いて
症状や活動障害の進行を記録することを患者
に学んでもらいたいと考えている。
手術を受けるか長期保存療法を受けるかと
いう判断は、結局、患者の環境、価値観、お
よび期待に深く関係する問題である。「したがって、坐骨神経痛力特続している患者の場合、手術と保存療法の間で妥当な選択ができると考えられるが、その選択は手術のリスクに対する抵抗感、症状の重症度、および自然治癒を待とうという気持ちによって変わり得る」とDeyo博士は論説の中で述べている.
参考文献:
Cherkin DC et al., An international compari-
son of back surgery rates, Spine,1994;19:
120l-6
Deyo RA, Back surgery-Who needs it?, New
England Journal of Medicine, 2007
356:2239-43.
Peul WC et aI., Surgery versus prolonged
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England icu,·,,at of Medicine, 2007;
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The Spine Patient Outcomes Research
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2006 : 296:245 1-9.
BacM.ener 22(7): 73 , 80 , 8 l , 2007 . ·
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